主   旨

日本楽器による創作活動が、注目を集めだしてから久しい。「現代邦楽」とよばれるこの活動は、40年代後半に端を発する。しかし、もっとも活発な時期は、60年代からのほぼ10年間であった。この時期、現代邦楽を専門とする若い演奏家、演奏団体の活動が、一つの極相をみせていた。かれらは、日本楽器に未知であった作曲家に働きかけては作品を委嘱し、活動の輪を急速にひろげていった。それを助長したのが、NHKのラジオ番組「現代の日本音楽」であった。日本楽器の、単体としての能力の開発や、伝統的合奏原理を押しひろげた種々の合奏など、この番組では、日本音楽の伝統美の、現代における芸術的枠組での創作作品を、紹介し制作してきた。この年表は、ながい現代邦楽の歩みの凝縮された記録であり、20世紀後半におけるわが国の作曲家と日本音楽の演奏家が、ねばり強く追い求めてきたあたらしい音への尊い軌跡である。